手原SLへようこそ

2008年11月30日　中日新聞
栗東市の JR 手原駅近くの通称 SL 公園に35年以上保管されている蒸気機関車 SL を保存していこうと地元の旧国鉄 OB らが手原 SL 同好会を結成し清掃活動に取り組んでいる。発起人の一人西村正男さん（66）も旧国鉄マン。「懐かしくて放っておけない」と変わらぬ愛情を注いでいる。
デゴイチの愛称で親しまれた D 51型403号。1940年（昭和15年）に製造され、戦中から戦後の復興期に旧国鉄の草津線や奈良線を走った。
全長約20 M 重量約68 トンの大型車に最大約1300馬力を持ち、主に貨物輸送で活躍した。今の場所に置かれたのは廃車になった73年。手原駅開業50周年を記念し、旧国鉄が当時の栗東町に貸与した。以降地元の旧国鉄関係者が管理してきた。西村さんらの一世代前の先輩たちだ。
しかし、これらの OB が高齢となり、昨年とうとう担い手がいなくなった。引き継ぎ先を探していた市は、シルバー人材センターに管理を委託。理事の西村さんは旧知の旧国鉄 OB らと有志を募り同好会を立ち上げた。同好会には市内の60〜70歳代の男女約30人が集まった。デゴイチを実際に運転していた元機関士や駅員、熱心な SL ファンなど顔ぶれは様々。
初めて活動した7月には、埃や落ち葉をかぶった車体を廃油を使って布拭きした。高さ約4メートルの鉄の塊によじ登るのは一苦労だったが脂まみれになって磨き上げた。
西村さんも幼少期の憧れを胸に現役時代は SL の車掌を務めた。
「独特の揺れや客車に立ちこめた煙が目に浮かぶよう」自分たちの手で往年の姿を取り戻すSL に、思い出が蘇った。こういった展示用の SL は各地に残るが、保存団体がなく撤去される例もある。県内では湖南市の JR 甲西駅前に設置されていた SL が駅前広場の整備に伴い昨年撤去されている。「 SL を知らない世代にも自分達を虜にした魅力を伝えたい。街のシンボルが無くなるのは寂しい」と西村さん。同好会は今後清掃活動のほか、 SL を囲んだ模擬店の開設や蒸気で動くミニ機関車の運行も計画し、保存への関心を高めていく。